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4月6日の中日新聞に以下の記事か掲載されました。



野良猫を遺棄 送検された町職員 「生かしたい」苦悩の選択
  2014.04.06 

 「私は命令に従っただけ」

 昨秋日本で公開された映画「ハンナ・アーレント」で、第二次世界大戦中にユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を先導したナチスの高官アドルフ・アイヒマンは裁判の席でつぶやく。映画は、ドイツ系ユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントによるナチス戦犯の裁判傍聴記を映像化した。数百万の命を奪ったホロコーストは、怪物とは程遠い、命令を黙々と遂行する凡庸な役人により引き起こされた、と喝破している。

 9割が殺処分に

 多くの命が理不尽に失われる事態は現代でも起きている。環境省によると、二〇一二年度に全国で十三万七千七百四十五匹の野良猫や捨て猫が保健所に引き取られ、新しい飼い主が見つからず九割近い十二万三千四百二十匹が殺処分されている。

 同じ役人でも、三重県川越町環境交通課の課長(55)と課長補佐(46)はアイヒマンとは違う決断を下した。一二年秋、「車のボディーをひっかいて傷つける」「畑を荒らす」などの住民の苦情を受けて三匹の猫を捕獲したが、保健所に持ち込まずに同県四日市市の山林に逃がした。

 二人は普段、住民の通報があると、車にひかれ路上に放置された野良猫の死骸を袋に入れてペット葬儀業者に引き渡す職務を通じ、猫の死を身近に感じていた。保健所に持ち込まれる野良猫たちの末路も見てきた。逃がした訳を聞くと「誰にも引き取られず、ほとんどの猫が二酸化炭素ガスで殺処分される。少しでも生き残る可能性に賭けたかった」と言葉を絞り出した。

 この決断には違法性があった。同県鈴鹿市のNPO法人「グリーンネット」は、山林に逃がした行為が動物愛護法の禁止する「遺棄」にあたるとして地元の四日市北署に告発。町職員二人は昨年十一月に書類送検された(後に不起訴)。

 グリーンネットの武藤安子理事長(44)は二人の行為を「偽善」と批判する。「猫は人間の助けがないと生きていけない。逃がすのはその場限りの責任逃れに過ぎない」。逃がした猫に飼い主がいた場合は、窃盗罪や動物愛護法の殺傷罪にあたる可能性もあると指摘する。

 では殺処分を減らすためどんな対策をとればよいのか。猫は繁殖力が高く、狂犬病予防法のような駆除規定もないため、犬に比べて数が増えやすい傾向にある。グリーンネットをはじめとした民間団体は地道な「TNR活動」に取り組む。捕獲し(Trap)、去勢や避妊手術を施し(Neuter)、元の場所に戻す(Return)活動だ。手術で発情期の鳴き声も抑えることができるという。

 またふん害を防ぐために、地域で協力して猫を管理する「地域猫」という活動も全国で広がりを見せる。餌やりをする場所を決めて、トイレは特定の場所で済ませるようにしつけて、地域全体で猫を見守っていく。

 去勢や地域猫活動の推進は行政機関の先導が不可欠と武藤理事長は指摘する。「民間団体はしょせんよそもの。地元の人たちを説得しきれない」と話す。

 行政機関も対策

 行政機関や警察も殺処分数の減少に向けた対策を進める。昨年九月に施行された改正動物愛護法により、自治体は飼い主が手放した犬や猫の引き取りを拒否できるようになった。熊本市動物愛護センターは〇二年度から「殺処分ゼロ」の目標を掲げ、猫を手放そうとする飼い主の説得に努めている。兵庫県警は今年一月、猫を捨てるなどの動物虐待行為の通報や相談を受け付ける専用電話「アニマルポリス・ホットライン」を新設した。

 しかし川越町環境交通課長は「猫を飼っていない人の多くは、野良猫は害獣と考える。自治体だけが変わってもうまくいかない」と話し、猫の保護を住民に理解してもらう難しさを指摘する。「保健所に連れて行って殺せばいい」とあからさまに処分を求める住民もいるという。

 野良猫の問題は、万単位の生き物が生きるか死ぬかの瀬戸際にあるいのちの問題である。害獣だから殺す、飼えなくなったから捨てるといったモラルを正さない限り、殺処分はゼロにならない。

 映画「ハンナ・アーレント」の終盤、ハンナはスピーチで観客に訴える。

 「アイヒマンは大切な“人間の資質”を放棄しました。思考する能力です。その結果モラルまで判断不能となった。思考ができない平凡な人間が残虐行為に走るのです」

 「ニュースを問う」へのご意見は、〒460 8511 中日新聞編集局「ニュースを問う」係へ。電子メールは、genron@chunichi.co.jp
以上 



川越町職員はなぜ猫を駆除したのか。
今回の記事の取材を依頼された時、マスメディアは事件の本質を捉え、法的根拠無き駆除業務の違法性を糾し
当記事が共生の取り組みを推奨、遺棄犯罪の抑止につながるものと期待し取材を受けました。

ところが、この記事では問題の本質が読み取れず、記者にその意図はなくとも誤解を招くと思いました。

当会の調べでは川越町職員が自ら進んで住民サービスとして猫駆除に乗り出していました。
長年、担当課独自の判断で長年猫を捕獲して保健所に連れて行き殺していたはず。
この記事では、業務命令に背いて猫を逃がしたように受け取れますが、それなら「捕獲した猫を保健所へ連れて行け」と命令を下した人物または機関を明らかにし、その意図を検証する必要があると思います。

また、猫との共生の取り組みを選択しなければならなかったにもかかわらず、職員の選択は保健所か遺棄しか無かったかのような印象を受けます。
「猫を飼っていない人の多くは、野良猫は害獣と考える。自治体だけが変わってもうまくいかない」との職員の釈明に対する検証もなされていません。
猫との共生を啓発して住民の意識を変えていくのは行政の職責であることは言うまでもありませんが、この当たり前の啓発や取り組みが三重県ではなされず、猫の餌やりを禁止し、保健所が捕獲された猫の引取りを続けるなどの猫駆除行為を手助けしてました。これが問題の根幹と考えます。

当記事では、保健所に持ち込まずに遺棄した職員を英雄視し、遺棄犯罪を正当化しているように感じられます。
読者がこの記事を鵜呑みにして遺棄犯罪を選択するような事態が起こるのではないかと危惧します。

庶民に影響力の大きいマスメディアとして、遺棄犯罪を称賛するかのような当記事は不適切でないかと感じました。

中日新聞はこの記事に対する意見を募集しています。
皆様のご意見をぜひ中日新聞にお送り下さい。

ニュースを問う」へのご意見は、
〒460 8511 中日新聞編集局「ニュースを問う」係へ。
電子メールは、genron@chunichi.co.jp
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